学振・リーディング大学院の税金関係

国税庁ウェブページリニューアル前に書いてしまったので悲しいことになっています。 Internet Archiveとかで頑張ってください


このページに書いてあることの正しさは一切保証しません。不明な点ついては各自で国税庁Webページを見るなり最寄りの税務署に問い合わせるなりしてください。

課税の基礎

基本的に税金は、一年間(1/1 - 12/31)に働いて得たお金(収入)に対して課税されます。しかし、正確な課税ルールを把握するには、まず「経費」という概念を考える必要があります。我々は普段意識することは少ないかもしれませんが、自営業者、例えば八百屋さんを例に考えてみましょう。八百屋さんは市場で野菜を買って、消費者に売って商売にしています。ですので、もし税金を「得たお金」に対して課税するとすると、消費者からもらった野菜の代金に対して税金が課されることになってしまいます。しかしながら、八百屋さんの儲けは、売って手にした野菜の代金から野菜を仕入れるのに使った代金を引いたものでしかありません。したがって、仕入れ値を引かなくては実体に沿った課税になっていません。

この八百屋さんの例を一般化すると、任意の職業に対して、収入を得る際に必ずお金をまずいくばくか消費する必要がある、ということがわかるかと思います。この、収入を得るために費やしたお金のことを「経費」と呼び、税金は*収入から経費を引いた額に対して課税されます*。なお、この「収入から経費を引いた額」を所得と呼びます。

税区分として所得税、住民税の2つがありますが、実際にはどちらとも所得に直接課税するのではなく、所得から一定の額(控除)を引き、それに対して課税します。すなわち、所得から控除を引いたものに一定の税率を掛けたものを税金と呼びます。したがって、我々がなすべきことは、

の二点になります。

税金はいくらかかる?

上で少し述べましたが、税金は所得税、住民税の2種類があります。このうち、所得税はより単純です。

所得税

所得税は、日本国内どこにいようと定率で所得に課税されます。具体的な税率は国税庁Webページを参照しましょう。課税所得(所得から控除を引いたもの。収入ではない!)に応じた税率の表があります。学振、ALPS等であれば課税所得は195万円以下にできますので、基本的には 5% かかると思ってもらえれば大丈夫です。なお、万一TA等で課税所得が195万円以上330万円以下になってしまうと、課税所得から97500円を引いたものに対して10%の税率が課されます。

住民税

これは各自治体により異なります。例として東京都ですと、課税所得に対し 10% となっています。更に均等割5000円が課されます。

国民健康保険

2種類と言いましたが、国民健康保険にも実は所得比例分がありますので、便宜上ここでは税金と考えます。すると、国民健康保険の所得割は 9.43% 、また均等割としては49500円が課税所得に課されます。

以上の議論より、税金は課税所得に対して概ね 25 % 、更に均等割55000円程度が課されます。なお、均等割に関しては、自治体にも依るとは思いますが所得によっては減免措置がありますので実際の額はもう少し少なくなります。

税区分と経費

さて、いよいよリーディング大学院、学振の話をしていこうと思います。まずは、リーディング大学院、学振の税区分についてです。リーディング大学院は、雑所得と呼ばれる所得に相当します。これは、区分としては例えばフリーランスのエンジニアなど、特定の事業者に雇用されているわけではなかったり、あるいは雇用関係ほど強い関係がないような労働者の収入と同じになります。一方、学振は給与所得です。これは普通の勤め人の所得と同じ分類です。

さて、では税区分が異なると何が違うのでしょうか?まず、雑所得ですが、一般にこのような収入を得る場合比較的大きな経費が発生します。例えばフリーランスのエンジニアであれば、ミーティングに関わる交通費や、私物のコンピューターの費用、あるいは事務所の家賃などです。したがって、雑所得に関しては経費を自由に申告することができます。一方給与所得は、普通の勤め人を考えればわかるように、経費はほぼ0です。では給与所得に経費は存在しないんでしょうか?でもそれではあまりにかわいそうです。そこで、給与所得に関しては給与所得控除と言って、収入に応じた一定額を経費扱いにしてよいという制度が存在します(なお、名前は「控除」となっていますが、性格的には「経費」に限りなく近いものと言えます。したがって、本稿では「控除」と言ったとき給与所得控除を指すことはありません)。さらに、給与所得に関しては、源泉徴収と言って、毎月の給与から税金が天引きされます。ですので基本的にできること・すべきことというのはなにもありません。ただし、学振に関しては後述の3割経費という仕組みがあります。

以上より、「収入、経費を正確に把握し、所得を正確に把握する」というポイントに関しては、

ということになります。

リーディング大学院 - 経費

まずはリーディング大学院の経費についてです。まずは授業料を忘れないようにしてください。授業料が経費であるということに関しては国税庁から正式な通達が文科省になされていますので堂々と経費にしましょう。あとは定期券、通信費など、経費と思しきものは入れましょう。また、家賃、光熱費に関しても、適切な割合で按分して経費にすることができます。PCやスマートフォンの代金等もこれに準じると考えられます。なお、不明な点に関しては所轄の税務署にお問い合わせください。

上で書きましたが、税率はおよそ25%です。経費として申告した額の1 / 4が税金から引かれます。すなわち、*4万円経費を計上すれば、計上しなかったときと比べ税金が1万円安くなります*。逆に言うと、本などを25%引きで購入できるようなものです。頑張って経費を計上しましょう。目安としては、同収入に対応する給与所得控除より若干多い程度だと言われています。

どうしても経費が足りなかった人のために - 家内労働者等の必要経費の特例

基本的には上の方法で、対応する給与所得の給与所得控除額程度までは経費を計上するのが一番よいし、実際に計算すればそうなるだろうと思います。しかし、慎ましい生活をしているだとか、あるいはそもそもいちいち経費を算出するのが面倒だと言うような場合に関しては、家内労働者等の必要経費の特例を適用することができます。同暦年の税金に給与所得控除を適用していないことを条件に、65万円を経費として計上することができます。なお、同年の税金に給与所得があり、給与所得控除が適用されている場合、「65万円から計上された給与所得控除を引いたもの」しか経費として計上することができませんので注意してください。具体的には、後述しますが学振一年目かつリーディング大学院からお金をもらっていたような場合に関しては、家内労働者等の特例を行使することはできません。

ちなみに、本当に大学院生が家内労働者等に当てはまるかということですが、「特定の者に対して継続的に人的役務の提供を行うことを業務とする者 」であると解釈できるので、大丈夫であろうというのが通説です。実際にこれを申告して受理された人もいるようです。心配であれば所轄の税務署にお問い合わせください。

学振 - 3割経費

学振の給与に関しては、年度初めに手続きをすることが必要ですが、給与の内3割、毎月6万円合計72万円を経費として扱うことができます。給与所得控除も受けられるので経費の二重取りになっていますが、学術振興会への税制優遇として例外的に認められているようです。こちらを申請すれば、見かけの月収を14万円まで減らすことができます。上の理屈で言えば72万円の25%、18万円を得することになるので、きちんと申請しない手はありません。

給与所得者の特定支出控除

このようなものもありますが、残念ながら給与の支払者であるところの日本学術振興会が認めていないようです。

控除

控除ですが、これは所得税、住民税、国民健康保険の3つですべて異なります。ただし、次の点だけ覚えておけば大丈夫です。他は勝手に適用されます。

なお、学振に関しては年末調整ですべて学術振興会がかわりにやってくれます。詳しくは年末に送付される資料をご覧ください。

具体例 (2018/04/21追記)

リーディング大学院1年目(M1)

昨年の収入がリーディング大学院のみ
家内労働者等の特例を使えば所得が0になります。
昨年TAやアルバイト等の給与所得があった
給与所得は給与所得控除を使いましょう。リーディング大学院の収入は雑所得なので、経費で相殺します。授業料なり通信量なりで頑張って60万円/36万円を相殺して下さい。あるいはFMSP(36万円)かつ昨年の給与収入が65万円以下であれば、基礎控除でなんとかすることもできるでしょう。
昨年アルバイト等による雑所得があった
とにかく経費を計上してください。雑所得間の赤字は通算して計上することができるので、学費や本代などを経費に計上することでアルバイトの収入に対する課税額を減らすことができます。

リーディング大学院2年目(M2)

経費でがんばってください。経費が足りなければ家内労働者等の特例で。

学振1年目

昨年1-3月にリーディング大学院の収入あるいは何らかの雑所得があった
リーディング大学院の収入は経費で相殺してください。学振の収入は3割経費や勤労学生控除を使うことで課税額を減らしましょう。
昨年1-3月にアルバイト等の給与所得があった
とくにできることはないのでおとなしく確定申告しましょう。
昨年1-3月に収入がなかった
学振の収入は3割経費や勤労学生控除を使って減らしてください。

学振2年目以降

やるべきことは年末調整だけです。

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